■世界の複数都市で開催する「メリット」

 次回2028年のロサンゼルス大会ではクリケットが実施される。英連邦諸国を中心に非常に盛んなボールゲームで、世界で最も人口の多いインドで盛んなため、競技人口は非常に多いが、クリケットは日本ではほとんど知られていない競技だ。

 もし将来、日本で再びオリンピックを開催する日が来たとしたら、日本はクリケット競技場を新設する必要がある。しかし、日本では大会後のクリケット場の利用方法がないので、おそらく大会後には野球場に改装することになるだろう。

 たとえば、2000年のシドニー・オリンピックのときにシドニーのオリンピック・パーク内に建設された野球場は、その後クリケット競技場に改装されて使用されている。野球が普及していない国で開催された大会で建設された野球場は、後利用ができないのだ。

 その点、複数都市開催を許容すれば、野球は野球が盛んなアメリカや東アジア諸国、カリブ海地域で実施し、クリケットは英連邦諸国やインド亜大陸で実施すれば、競技場を新設する必要もなく、また、各競技にとって使い勝手の良い、大規模競技場でゲームをすることができ、観客動員数も増える。

 世界の複数都市で開催すれば、テレビ放映的にもメリットがある。

 つまり、24時間世界のどこかでオリンピック競技が実施されているので、テレビ局は24時間生中継を実施できるのだ。

 複数都市開催というのは、オリンピックにとって革命的な変化ではあるが、必ずしも前例がないわけではない。1956年のメルボルン大会では馬術競技はスウェーデンのストックホルムで開催された。他大陸とは地理的に隔絶されたオーストラリアでは動物検疫が厳しかったからである。また、今年のパリ大会でもサーフィン競技は南太平洋のフランス領タヒチで行われる。

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