■多くのレフェリーが「ピッチを去る」理由

 サッカーという競技で最も醜いシーンのひとつと言っていい。サッカーしか見ない大半のファンにとっては見慣れた光景であり、もしかしたら、ファンの怒りをピッチ上で示してくれる選手たちを好ましく感じるときもあるかもしれない。しかし、他の競技に親しんだ人々にとっては、信じがたい蛮行と映る。少なくとも、サッカーのイメージを著しく損なう行為であるのは間違いない。

 さらに、あらゆるレベルで「もうイヤだ」と多くのレフェリーがピッチを去って行く最大の理由が、こうした選手たちからの抗議や威嚇であると言われている。

 そうした行為をなくすために考案されたのが、名前はどうも熟さないが、「キャプテンのみが主審に話しかける(アプローチする)ことが可能」という「新ルール案」だった。

 現行のルールでは、キャプテンといえども、レフェリーに判定の理由をたずねることはできない。それをキャプテンに限定して認め、それによって個々の選手が怒りにまかせて罵声を浴びせたり、何人もでレフェリーを取り囲むというシーンをなくそうという目的の「ルール改正案」である。

 このアイデアは、今年3月にスコットランドで開催された国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会で討議され、正式な「ルール化」はされなかったものの、ルール改正に向けた「試行」のひとつとして認められた。そして年次総会から20日後の3月22日にIFABからの「回状」第29号として、世界各国のサッカー協会にその詳細が通知された。

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