■「1人2人欠けるとどんどん全体の強さを失ってしまう」
しかしながら、後半6分に天野純の突破を止めようとした満田が2枚目の警告を受け、退場処分を受けたことで試合の流れがガラリと変わってしまった。このシーンは確かに微妙な判定で、スキッベ監督は激怒。「マコを代えるより審判を代えてほしかった」と試合後会見で苦言を呈したほどだったが、一度下されたジャッジが覆ることはない。10人の劣勢を強いられた広島は守勢に回り、横浜の猛攻をしのぐ形を余儀なくされた。
それで守り切れれば御の字だったが、後半32分に横浜の渡邊泰基がイージーなスローインをミス。大橋が拾うと、一目散にドリブルで持ち込んで豪快な2点目をゲットする。これにはチーム全体が喜びを爆発させたが、これで守り切れれば最高だった。
けれども、広島はまたも勝負弱さを露呈する。後半41分に宮市亮の突破からアンデルソン・ロペスに2点目を献上すると、4分後にはまたも同サイドを崩されて、最終的にはヤン・マテウスに逆転ゴールを決められたのだ。
「今季の僕らはもったいない試合が沢山ある。本当に内容的にすごくいいサッカーができているし、圧倒して勝ち切れるチームになっていかなきゃいけないと思う。
優勝するチームっていうのは『そんな試合でも勝てるんだ』という勝負強さがあるものなんで」と森保一監督時代にJ1制覇を経験しているベテラン・塩谷司はしみじみと語っていたが、その領域に達することができていないのが現実なのだ。
「自分たちはいいチーム。個人を見れば上位にいるに値する選手が揃っていたが、1人2人欠けるとどんどん全体の強さを失ってしまう。小さいメンバーでやっていかないといけない小さいクラブだと思っています」
スキッベ監督も言うように、川村や野津田のような実績ある選手が流出するケースも少なくないだけに、ここから浮上していくのは大変だ。が、その術を見出すことは可能なはず。今こそ指揮官と選手たちの総合力が問われる時である。
(取材・文/元川悦子)
(後編へ続く)