■川崎に不足していたもの
町田の戦い方は事前に織り込み済みだった。ロングボールを多用し、セカンドボールを巡る攻防で激しいプレスを繰り出してくる。アタッキングサードでスローインを獲得すれば、左に林幸多郎、右には鈴木準弥とロングスローワーの出番となる。
キャプテンのMF脇坂泰斗も「川崎のサッカーができなかった」と唇をかんだ。
「例えば向こうのストロングポイントであるロングボールに対して、ラインがちょっと低くなって僕たちが間延びしてしまったのもあったし、あとは前線のところでもっと(出し手に)制限をかけないといけない。その両方で問題があった」
ロングボール戦法に対して意識過剰になった弊害と言うべきか。前節で町田に初黒星をつけたサンフレッチェ広島のように、素早いワンタッチパスを多用してボールを動かしながら、前に出てくる町田の背後を突くような戦い方も講じられない。
単刀直入に言えば、川崎には「勇気」の二文字が不足していた。DF高井幸大から脇坂への縦パスを狙われ、プレスを仕掛けてきたMF柴戸海にカットされた末にFW藤尾翔太に決定的を作られた開始9分のピンチも、腰を引かせる一因になった。
それでも小林は「無失点のまま耐えられれば、後半はまた違った試合運びができると思っていた」と明かす。しかし、ベンチの期待は32分に打ち砕かれた。町田が青写真通りの流れるようなパスワークで、均衡を破る先制点をもぎ取ったからだ。
(取材・文/藤江直人)