久保選手も三笘選手も「なるべくしてなった」

――話は変わりますが、久保建英選手、三笘薫選手という2大スターについてお聞かせください。一方は、幼少期から海外で経験を積んで、もう一方は、日本の大学を出て、成人になってから海外へ挑戦しています。この2つのコースについて、また、次世代スターを生み出すには、どのようなステップアップが適切なのでしょうか、小野さんのご意見は?

 大切なのは、ステップアップのコースではなくて、選手自身が、明確にキャリアパス(成功するための道筋)が描けているかという点。とりあえずプロを目指して、とりあえずレギュラーを目指して、試合に出れるようになったから、とりあえず海外移籍をしたいという考え方は、世界トップクラスを目指すには少し遠回りかもしれないと思います。

アジアカップで攻撃のタクトを振った久保建英。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)


 久保選手は、FCバルセロナのカンテラで結果を残し、帰国後、FC東京で、18歳から海外にステップアップできる契約を勝ち取った。そして、バルセロナ、レアル・マドリードという2つの選択を迫られた際は、人情じゃなくてビジネスでレアルを選び、苦しい時期も、スペインでやり続けるという道を選んだ。三笘選手は、高校生で、このまま川崎フロンターレに上がっても通用しないと大学進学を選んだのは有名な話ですし、海外移籍のときも、プレミアリーグという世界最高峰の舞台へ行くためには、ヨーロッパの1部リーグ、または5大リーグの2部で試合経験がある、そして、ある程度の活躍をする必要があるという仮説を立てて、ベルギー1部のユニオンSGを経て、プレミアリーグのブライトンに辿りついた。つまり、2人ともなるべくしてなった。今の2人の活躍は決して偶然じゃなくて、遅かれ早かれ届くステージだったと、私には見えます。
 久保選手や三笘選手のような選手は、サポートがなくても自己プロデュース力で世界のトップになっていくでしょう。でも、そもそも活躍の場が提供されていない、経済的に貧しいからサッカーに専念できない、または、海外への挑戦の意欲はあるけど努力の方向が間違っている、そういったアジアの選手たちのステップアップのお手伝いをするのが、私らの仕事だと思っています。

小野寛幸(おの・ひろゆき)ACAフットボール・パートナーズ CEO。慶應義塾大学卒業後に、大和証券エスエムビーシー株式会社(現:大和証券株式会社)に入社し、M&Aや資本調達アドバイザリー業務に従事。米系投資銀行を経て2011年ACA株式会社入社。
 現在はマルチ・クラブ・オーナーシップを核としたフットボールビジネスを新設、資金調達や事業構築を担当する。

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