■「普通の国」だったレバノン
レバノンはそんな産油国ではありません。その代わり、周辺のシリアやレバノン、パレスチナなどと同じように数千年の歴史と文化遺産、そして農業などの古くからの産業がある“普通の国”です。
この地域は「レバント地域」と呼ばれ、東洋からのさまざまな商品がペルシャ湾や紅海を通じてもたらされ、ここを通じて地中海諸国に運ばれる中継貿易で栄えましたし、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教もここで生まれました。
しかし、最近の半世紀ほど、この地域は“普通”とはほど遠い状態になっています。
発端はパレスチナの一角にユダヤ人の国「イスラエル」が建国されたことでした。
3000年ほど前にこの地にイスラエル王国が存在しましたが、その後、王国は滅ぼされ、彼らは世界中に散らばって生活してきました。ヨーロッパのユダヤ人は、時々ひどい差別や虐殺の対象になってしまいました。そのうち、最大最悪のものがナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅計画で、各地のキャンプに集められたユダヤ人が大量に虐殺されます。これが「ホロコースト」です。
そのため、ユダヤ人たちはユダヤ人国家を再建する必要を感じ、パレスチナに帰還しようという「シオニズム運動」が始まります。そして、ヨーロッパ諸国がこれを後押しして1948年にイスラエルが建国されました。
しかし、その結果、この地に住んでいたアラブ系のパレスチナ人は土地を奪われて大量の難民が発生。その後も、イスラエルは軍事力を背景に支配地域を拡大し、難民は増え続けています。