■公平にする理由
サッカーでエンドの入れ替えを行うのは、「公平」の精神の表れだ。太陽の向き、風の向きやピッチの状態など、どちらのゴールを攻め、守るのか、条件は公平とは言えない。サッカーの母国イングランドでは、高山もないが、平地も少なく、ゆるやかな丘陵地が続いている。ピッチに傾斜があることは珍しいことではないのである。
イングランドを旅行していると、ときどきとんでもないサッカーのピッチに出くわす。私は一度、片方のゴールが数メートルは高いのではないかという斜面につくられたピッチを見たことがある。上から下に攻めれば有利だなと思いながら、それとも、下から上に攻めるほうが、パスのコントロールはしやすいのだろうかとも考えた。しかし一見、不公平きわまりないピッチでも、エンドを入れ替えれば試合は「公平」になるのである。
やがてゴールごとのエンドの交代がなくなり、エンド交代はハーフタイムに限られるようになる。1871年にサッカーの最初の公式戦である「FAカップ」が始まったとき、試合時間が90分であることと、ハーフタイムに「インターバル」、すなわち選手の「休息」の時間を取ることが認められるのである。