■「よりW杯に生きる」
アジアカップをプレ大会を位置づけるのには、ワケがある。そして、そのためのスタッフ配置もすでに考えられている。
「アジアカップは、W杯同様に長期にわたって何試合も続いていく大会です。今大会は初戦から決勝戦までが7試。W杯本大会は、次回から8試合になりました。この大会形式において、1番負荷がかかるのが決勝トーナメントの最初と2試合目なのです。どこが来るか分からないから、事前の準備がすごく難しい。
たとえば今回のアジアカップであれば、グループ分けが2023年5月に行われて対戦相手が決まったので、大会までの間にグループリーグの相手はずっと分析できたわけです。
しかし、決勝トーナメントの1試合目は、たとえば日本がグループリーグ首位ならB組、E組、F組の3位のどれかが来るかもしれないし、日本の順位が違うと別のチームが来るということも考えられます。たくさんの相手が想定できるので、分析するにもマンパワーが必要になります。
そこで今回はW杯のシミュレーションとして、テクニカルスタッフの構成を変えました。カタールに視察に行くグループが3人、その3人とは別に決勝トーナメント用の先回りできるグループが国内で3人という形です。映像はあるので、基礎データなどは国内のベースキャンプグループに担当してもらいます。
どのチームが対戦相手でも、“この国のことは分かりません”はあってはならないことです。ですからサポートグループの質を上げなければいけない。そしてもちろん、そのサポートグループにそれを教える指導者も必要になってきます。
次回大会のW杯では48チームの出場ということでさらに大変ですから、そのときにどうするのかが、テストできるのです。対戦相手は違いますが、何をどう準備するかというやり方は大枠では変わらない。なので、いいシミュレーションになると思います。もちろん、その大枠は充実した形ですでにできあがっています。また、今回はすべてドーハ市内での開催ということで移動がないので、W杯のときよりもそこに集中して取り組めることで、よりW杯に生きると思っています」
(取材・森雅史)
■山本昌邦プロフィール■
やまもと・まさくに 1958年4月4日生まれ。
選手時代をヤマハ発動機サッカー部(現・ジュビロ磐田)で過ごし、サッカー日本代表としてもプレー。引退後は指導者の道を歩み、同部でのコーチを務める。その後、日本代表のコーチとしてフィリップ・トルシエ氏やジーコ氏を支え、2004年のアテネ五輪では日本代表監督を務める。そして、ジュビロ磐田の監督に就任し、Jリーグでも指揮を執った。今年2月から、日本サッカー協会のナショナルチームダイレクターの職に就く。