■山口蛍が語る「一番キツかった時期」

 これに選手たちも呼応した。特に大迫勇也、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳という「ビッグ4」がシーズン通してフル稼働し、吉田監督の目指す形を追求していったことが大きかった。当初は彼らに齊藤未月も含めて「ビッグ5」という見方をされていたが、齊藤が8月19日の柏レイソル戦で重傷を負って離脱。「未月がいなくなった時期が一番キツかった」と山口も語っている。

 そこで万が一、4人の誰かが離脱していたらチームは崩れてしまったかもしれない。けれども、30代の元日本代表カルテットは猛暑の夏を走り抜け、結果を出し続けた。

 特に懸念されたのが大迫だ。2022年は相次ぐケガに悩まされ、最終的に自身の代表キャリアの集大成となるはずだったカタールワールドカップ(W杯)も逃す結果になっている。それだけに「大迫がシーズン通して高いパフォーマンスを見せ続けるのは不可能」とさえ言われていた。しかしながら、今年は代表招集が見送られ続けたのも幸いし、J1・34試合全てに出場。彼がこれだけコンスタントにピッチに立てたのは30代になってから初めてだ。

「まずはコンディションが非常によく入れたというのが大きかったと思います。僕自身はまだまだフィジカルを鍛え上げられると思っているし、挑戦するので、楽しみにしてください」と本人は12月5日のJリーグアウォーズの場で自信をみなぎらせた。まさに大迫完全復活を印象付けたシーズンになったのだ。

 山口にアクシデントが生じたラスト3戦で穴を埋めた酒井高徳の存在も特筆すべきものがあった。彼が中盤の穴を埋め、タフなメンタリティを注入したことが、タイトルへの最後の一押しになったのは紛れもない事実。さすがはハンブルガーSVでキャプテンまで務めた男。圧倒的な経験値が神戸の力強い支えになったと言っていい。

(取材・文/元川悦子)

(2)へ続く
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