■「活躍する姿を見せないと感謝の気持ちを伝えられない」
そこに舞い込んだオファーが、J2ザスパクサツ群馬からのものだった。「12月の中旬ぐらいにオファーが来て、即答でした。J2以上だったらプロになりたいっていう気持ちで大学4年間を過ごしていたので」と話すもので、プロサッカー選手の扉が開いた瞬間だった。
その後、すぐに群馬を訪れる段取りを両親とつけたのだが、同時に、そのビール会社にも菓子折りを持って謝罪に訪れた。「厳しい言葉をかけてくれる年配の方もいましたけど、その当時採ってくれた人事の方は、“活躍してくれたらそれでいいから”と言ってくれて、穏便に終わりました」。
そのとき、すでに内定式にも出席。「同期と一緒に飲み会もしてて、辞退したことをごめんなさいって連絡しました。そんな経緯でのプロ入りなんです」と言う。
「会社からしたら内定式もしてるし、しかも僕のせいで落ちてる人がいるわけですから申し訳なかったですけど」と付け加えるのは、ここまでの苦労から来る人の良さを感じさせるものだった。
瀬川は、「それでフロンターレまでいろんな紆余曲折ありながら来れて、自分もついてるなと思います」と話すが、「ここに来て終わりじゃないので。ここでちゃんとレギュラー取って、タイトル取って、もう30歳になりますけど、代表に入れるぐらいに。そういう人たちへの恩返しというか、活躍する姿を見せないと感謝の気持ちを伝えられないと思っていたので。やっとスタートラインに立ったって言ったら変ですけど、大学も4年まで試合に出てなかったですし、だから、基本、俺の人生は遅めからのスタートなので、ここからが勝負なのかなと思います」
そして、「ビール会社を入れたら6チーム目です」と語る瀬川にとって、タイトルは自分のためであり、プロへの扉を開き、そして見送ってくれた人たちへのためでもある。“6チーム分”の想いを乗せて、12月9日に挑む――。
(取材・文/中地拓也)
(中編へ続く)