■さまざまな呼び名
さて、ビブスのことをスペイン語では「チャレコ(ベスト)」と言うことはすでに紹介した。ポルトガル語でも「コレテ(ベスト)」である。一方、フランス語では「シャズィブル(司祭がミサに用いるそでのない上着)」と言うらしい。なかなかおしゃれではないか。ドイツ語では「ライプヒェン(キャミソール)」と、こちらは何やらなまめかしい。
ところが、私たちが通常使っている「ビブス」という言葉、これは英語の「ビブ」の複数形なのだが、「ビブ」(bib)とは、本来、赤ちゃんが使う「よだれかけ」のことなのである。そんなものを、年俸何十億円、アラビア半島の大国に行くと何百億円というプロ中のプロ、世界的スター選手までが毎日の練習で使っているのかと考えると、何やらほほ笑ましい思いがするのは私だけだろうか。
ところが「ビブス」という英語を使うのは英国で、アメリカでは「ピニー」と言うのが一般的らしい。複数形は「ピニーズ」である。ただこちらも、意味は「よだれかけ」である。ちょっとすました言い方では、「スクリメージ・ベスト」というのもある。「練習試合用ベスト」というようなイメージだろうか。