■「誇り」はどこへ?
今年の女子ワールドカップを見て、私はなでしこジャパンのプレーする姿に大きな感銘を受けた。世界の女子サッカーが良い意味でも悪い意味でも「男子化」し、男子の影響を受けたアンフェアな行為が横行するなか、ひたすらチーム一丸となり、チームの勝利だけを考えてプレーするなでしこジャパンに大きな誇りを覚えたし、「フェアプレー賞」は当然だと考えた。
しかしなでしこジャパンには別の側面もある。冷酷な決断でアンフェアな試合を平気で実行するという「ブラック」な側面である。私は、今後、なでしこジャパンのフェアプレーを無条件に称えることはやめにしようと思う。なでしこジャパンは、もう「フェアプレーの象徴」とは言えなくなってしまったのだ。
勝ちきれなくてもフェアプレーに徹した戦いを誇りに思い、それを自分たちのアイデンティティとしてきたのは、もしかすると、「サッカー国」としては「幼年期」だったのかもしれない。男子代表、年代別代表を含め、日本のサッカーは、今後「勝ちきるためにきれいごとなど言っていられない」という「青年期」あるいは「成熟期」にさしかかろうとしているのかもしれない。