プロリーグができてわずか30年ということを考えれば、日本サッカー界の成長は目覚ましいものがある。だが、サッカージャーナリスト・大住良之の目には、ある重要な欠落が映っている。それは、日本代表のワールドカップ優勝へのラストピースになるかもしれないのだ。
■ヘディングへの軽視
さまざまなレベルの試合を見ての私の結論は、日本ではヘディングが突き詰められていないということである。いや、「軽視されている」と言ったほうが正確だろう。空中に浮いたボールをジャンプしてともかく頭に当て、前に飛ばせばOK―。コーチたちの要求はこの程度なのではないか。そうでなければ、Jリーグのようなハイレベルな競技環境でMFの選手がフリーで、しかもスタンディングでヘディングできる状況で、味方につなぐことができないということが理解できないのである。
サッカーはパスで成り立っている。もちろんドリブルもあるが、サッカーというゲームが基本的にチームでパスをつないで相手ゴールに迫っていく競技であることを否定する人はいないだろう。トップクラスの試合では、1試合のパス数は、1チームあたり少なくとも300本、多ければ800本、900本となる。多ければ良いというものではない。ボール支配の状況にもよるが、パス数の多い少ないは、多分にチームのプレースタイルによる。