後藤健生の「蹴球放浪記」第179回「ラテン系の国では子どもはノーチェック(だった)」の巻(1)メキシコの記者席に派手めのお姉さんが鎮座していた謎の画像
イタリアW杯、イングランド対カメルーン戦の一般入場券 提供/後藤健生

 日本のサッカースタジアムは、世界でも最高級に治安が良いと言っていい。海外では暴れん坊も多く、厳しい監視の目が注がれている。だが、時には思わぬ人物が、その警備網を突破することがある。これは、サッカージャーナリスト・後藤健生の実験レポートである。

■メキシコで出会った笑顔

 1986年メキシコ・ワールドカップの開幕戦は前回優勝のイタリアとブルガリアという顔合わせでした。最近は、開幕戦には開催国が登場しますが、当時は前回優勝国は予選免除で出場権が与えられて開幕戦を戦うことになっていました。

 ただ、前回優勝国は予選免除だったので厳しい戦いを経験できず、世代交代が遅れるケースが多かったのでいつも開幕戦で苦戦していました。メキシコ大会のイタリアも、開幕戦も2戦目のアルゼンチン戦も1対1の引き分けに終わり、最終戦で韓国を振り切ってなんとか2位通過しましたが、ラウンド16でミシェル・プラティニのフランスに敗れてあっさりと姿を消しました。

 さて、その開幕戦の時のことです。試合が始まってしばらくしたら、記者席の大きなデスクの向こう側に、5、6歳のかわいい男の子が顔を出したのです。

 こう見えて、僕はけっこう子ども好きで、子どもの顔を見ると笑いかけたり、「バアー」とかついつい相手をしてしまいます。こちらが相手をすると、子どもは喜んでまた顔を出します。そんなわけで、開幕戦では90分間その子の相手をしながら試合を見ることになりました。

  1. 1
  2. 2
  3. 3