■「ゴンさんに取らせる」

 しかし0-1の状況で守っているわけにはいかない。後半、札幌はウーゴ・マラドーナを押し出して積極的な姿勢をとったが、これが磐田の攻撃力に火をつけ、24分にシュートのリバウンドを藤田が決めて2点目、さらに27分にはPKを中山が左隅にけり込んで3-0と差を広げた。そして36分、奥大介のパスを受けた中山が「大記録」をつくるのである。

 中央で名波からドゥンガへ、そしてドゥンガがワンタッチで最前線の奥大介にパスを送り、奥がペナルティーエリアに侵入。背後から渡辺卓、右から当初中山をマークしていた木山隆之と、札幌の2人の選手が迫る。このとき中山は得意の「プルアウェー」の動きで右に開いてフリーになっていた。だが奥の技術をもってすれば自分で左足シュートにもち込むのが自然な形だったし、それを決めきる自信も十分あっただろう。

 しかし奥の選択は「ゴンさんにハットトリックを取らせる」だった。シュートのブロックにきた木山の逆をとり、右足アウトサイドで中山の前のスペースにボールを送ったのだ。中山がこのチャンスを逃すはずはなかった。鋭くボールに詰め寄ると、右足インサイドでGKディド・ハーフナーを破り、ゴールに流し込んだのである。

 ハットトリックはすばらしい業績である。しかしサッカーはあくまでチームゲーム。すべてのゴールは、チーム全員の献身の結果にすぎない。私たちは、どんなときにもそれを忘れるべきではない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3