女子ワールドカップが閉幕した。スペイン代表が初優勝を果たす一方で、日本代表はベスト8で進撃がストップした。大会を通じて見えてきた、なでしこジャパンの「世界一奪還」への道のりを、サッカージャーナリスト・大住良之が考察する。
■新時代の象徴
チームをコンパクトに保ち、相手のボールを奪いに行く速さと強さを出す。奪ったボールを時間をかけずに前に運び、パススピードを上げ(もちろん正確さを求められる)、スペースをつくるランニングとスペースを使うランニングを増やす。そのランニングも、ただ走るのではなく、スプリントを多用する。そして多くのプレーがワンタッチかツータッチで行われる…。それはもちろん、現在の男子のトップクラスのサッカー、ワールドカップやUEFAチャンピオンズリーグなどと共通する方向性である。
スペイン対イングランドの決勝戦を見れば、90分間を通じてインテンシティが非常に高かったことは誰の目にも明らかなはずだ。女子サッカーは過去10年間で大きく変貌を遂げ、「新時代」にはいった。今回の決勝戦のインテンシティの高さは、それを象徴していたのだ。
インテンシティの高いサッカーの必要要素はいくつもある。スプリントを繰り返す高いフィジカル能力だけでは足りない。ハイレベルな技術(シンプルに止める、ける精度の高さ)、求められるポジショニングを常に取り続けられる戦術眼、そして何よりも、いつ何をどうするべきかの「判断」の素早さが求められる。体格やパワーでは明らかに劣るスペインが対等以上にイングランドとやり合うことができたのは、これらの要素がしっかりと鍛えられていたからにほかならない。