■2人を無力化

 大迫が受けたのは、川崎が攻め込み、神戸のペナルティーエリア内でDFの本多勇喜が倒れながらクリアしたボールだった。パスではない。たまたま、クリアしたボールが誰にも当たらずに、グラウンダーでセンターサークル付近にいた大迫まで届いたのだろう(もし、本多が狙ってパスのつもりで蹴っていたのだとしたら、それ自体がすごいプレーだ)。

 そして、大迫には川崎のCB2人(大南と山村和也)が付いていた。大迫が、普通にDFを背負うような形でボールを受けていたら、いかにポストプレーのうまい大迫でも容易にはパスをつなげなかったはずだ。

 そこで、大迫はDFのマークから逃げるように、かなりのスピードで走りながら、ボールを処理したのだ。

 だから、大迫が本多からのボールをタッチした瞬間には、ほんの少しだがDFとの間に距離ができており、ほとんどフリーと同じような感覚で処理することができた。そして、ツータッチ目でジェアン・パトリッキの前のスペースにパスを供給した。

 大迫をマークしていた大南が、慌てて反転して後ろからジェアン・パトリッキを追いかけた。その結果、相手を倒してしまうのである。

「ポストプレー」というと、屈強なDFを背負って後方から上がってくる味方に落とす作業だというイメージが強い。そう、32分に山田が行ったプレーが、まさに典型的なポストプレーである。

 だが、大迫は横に走ることで相手DFから離れてボールを処理した。そして、ボールを落とすのではなく、前線のスペースに流し込んだのだ。

 まさに、引き出しの数というか、バリエーションの豊かさというか、一言でポストプレーと言っても、その奥の深さを見せてもらったような気がした。

(3)へ続く
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