大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第117回「試合は何時から?」(3)Jリーグバブルで忘れ去られた「午後6時半理想説」の画像
キックオフ時刻の決定も、簡単なことではない(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は「え? きょうは7時半キックオフじゃなかったの?(by 7時10分に記者席に到着したベテランサッカー記者)」

Jリーグが出した結論

 さて、Jリーグ構想がまとまり、1年目に参加する10団体が決定したのが1991年。言わば世界のサッカーに「テレビ時代」が訪れる「前夜」のことだった。川淵三郎初代チェアマンはテレビ放映権を収入の大きな柱になると考え、それを特定のクラブではなく参加クラブ全体の利益にしようとアメリカのプロスポーツを見習って「放映権のリーグ一括管理」を決めた。だが後のプレミアリーグのように特定のプラットホームに一括販売するのではなく、個々の試合を販売するという形だった。

 とは言っても、川淵チェアマンは常日ごろから「スタジアムに来てくれるファンがいちばん大事」と語っていたから、サッカーファン、サッカーに関心をもつ人びと、そして何よりも日本のサッカーの未来を担う子どもたちが見に来やすいキックオフ時間を真剣に考えた。大がかりな調査の結果、出た結論が「土曜日の午後6時半」だった。

 日曜は少年から大人まで自分のサッカーの試合がある。土曜日は午前中は仕事や学校があり、午後はサッカーの練習になる。すると試合は土曜か日曜の「ナイトゲーム」になるが、日曜日の夜は翌朝の仕事や学校を考えると出かけにくい。すると土曜日の夜になる。しかし帰宅があまり遅くなるのは好ましくない。そうした検討の結果が、「土曜日の午後6時半」だった。テレビ局からは異論が出たが、川淵チェアマンは譲らなかった。

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