■サウジのイメージ戦略

 だが、トップリーグのなかの「格差」は世界のどこにもある。スペインではレアル・マドリードとFCバルセロナがタイトルの多くを得、ドイツではバイエルン・ミュンヘンがなんとブンデスリーガ11連覇を達成、フランスではカタールのファンドが所有するパリ・サンジェルマンが資金力で他を圧している。イングランドでも、長く「4強」の時代が続いた。そうしたリーグでは、少数のビッグクラブがリーグ総体の価値を高め、結果としてリーグの繁栄を支えてきた。

 だからこそ、Jリーグの野々村芳和チェアマンは「日本にもリーグ全体をリードするビッグクラブの出現を」と渇望するのだろう。Jリーグは、世界でも希有な「格差」の少ないリーグなのである。

 それはともかく、PIFの活動は、実はサッカーにとどまらない。スポーツではすでにプロゴルフのワールドツアーに深く関与しており、アメリカのプロレスにも投資している。その他にも、エンターテインメントのディズニー、コーヒーのスターバックス、アメリカのテクノロジー企業ウーバーにもかかわっている。目的は、世界に向けてサウジアラビアのイメージを高めようとすることで、サッカーはその有力な「コンテンツ」として重視されているのだ。

(3)へ続く
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