■2005年の台湾にて

 中国でも数多くの言葉が使われています。

 面積はヨーロッパ大陸が約1000万平方キロで、中国(中華人民共和国)が950万平方キロとほぼ同じ。人口は中国が約14億人で、ヨーロッパは全体で約7億5000万。中国で数多くの言葉が使われているのは当然のことでしょう。

 チベット語とか、ウイグル語、モンゴル語、朝鮮語など少数民族の言葉は別としても、いわゆる中国語の中にも数多くの方言があって、しかも、お互いに意思疎通することも難しいほどに違っています(ただし、中国には漢字という便利なツールがあるので、筆談をすればほぼ完璧に通じます)。

 そんな複雑な言語事情を痛感したのは、2005年に台湾を訪れ、台北地下鉄(台北捷運)に乗った時のことでした。「次の停車駅は……」というアナウンスが流れるのですが、同じ駅名を北京語、福建語、客家(ハッカ)語、英語で伝えるのです。

「次は大阪、大阪です」に続けて、「次は大阪でっせ。大阪でごわす」と続くような感じでしょうか?

 台湾の政府はもともと中国大陸を支配していた国民党が共産党との内戦に敗れて台湾に逃れてきたものなので、国語は大陸と同じ北京語です。しかし、台湾の住民は台湾の対岸の福建省や南部の広東省から移住してきた人が多いので、福建語が最も多く使われていて、「台湾語」とも言われています。また、「客家」というのは中国北部から南部に移ってきた民族で、台湾にも多くの客家の人たちがいるのです。駅名はどの言葉でも漢字は同じですが、発音が違うので3つの言葉でアナウンスするというわけです。

(2)へ続く
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