■「今までの感覚じゃ通用しないなっていうものを試行錯誤して」

 上福元にこの精力的なコーチングについて聞いてみると、「自分一人では守れないという考えがどこかにあって」と内なる考えを明かし、次のように続けている。

「もちろん、キーパー一人で無理やり防ぐということもできるんでしょうけど、それ以前の段階でもう少しリスクを消すとか、そういうのはキーパーでもっとできるんじゃないかと昔から考えてはいて、自分の中でその言葉をいつ言うのか、何を言うのか、それは追及していく中でより細かくなってきている」

 先述したように、発せられる声は鼓舞するためだけのものではない。選手がよりよくポジショニングできるようにするもの、あるいは、それぞれが持つ選択肢の中から判断を助けようとするものなど、かなり“実戦的”なものだった。

 というのも、「ただ声を出すというだけだと、選手もオートマティックになってしまう」から。だからこそ、「言葉のチョイスをちょっと変えるとか、選択を少しひねるだけで、すっと耳に入ってくるように、体が素直に反応できるようにというところは、練習の段階から意識はしています」と話す。

 それでも、「それがまだまだ完璧じゃないという感覚もありますし、今の場面はもっと気の利いた言葉をかけられたなとか、常に変化していく状況の中で、最適なものを選択できるようにという意識はあります」と、追及する姿勢を堅持する。

「昔だったら、うまく行かなかったときに“何でこうなんだ⁉”っていう、“あとからのリアクション”をして効果的じゃない時間を過ごしてきたこともあったんで、やっぱり、リスクマネジメントって未然にっていうところでの質がすごく大事かなと考えて、今までの感覚じゃ通用しないなっていうものを試行錯誤して、今にあるという感じなんです」

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