■内向きになった欧州の失敗

 2018年に、ヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)は「ネーションズリーグ」を発足させた。その結果、ヨーロッパ大陸以外の国がヨーロッパの代表チームと親善試合を戦うことが非常に難しくなってしまった

 ブラジルやアルゼンチンのような強国でさえ、ヨーロッパと対戦するのが難しくなり、ワールドカップ前の強化のために大切な時期に、日本や韓国と親善試合を戦うことになってしまったのだ。

 ヨーロッパが域内の強豪同士で切磋琢磨する一方、他大陸の国々がヨーロッパの強豪と対戦する機会を奪われたため、代表チームレベルでヨーロッパと他大陸の間の実力差が、従来以上に開いてしまうのではないかとも言われていた。

 ところが、実際にワールドカップが幕を開けてみると、ヨーロッパ勢が他大陸のチームに足をすくわれるケースが多発したのだ(その中でも、最も衝撃的だったのが、ヨーロッパの伝統国だったドイツとスペインが、相次いで日本に逆転負けを喫した事実だった)。

 ヨーロッパがアジア諸国との対戦で気持ちを集中できなかったということもできる。そして、他大陸のチームがヨーロッパの強豪と対戦することが難しくなったのと裏腹に、ヨーロッパ諸国も他大陸のチームと対戦する機会がなかったために、他大陸の進歩を肌で感じ取ることができなかったことが番狂わせにつながったのかもしれない。

 クラブレベルでも、代表レベルでも、また財政面でも競技面でも、現代のサッカー界は間違いなくヨーロッパが主導している。そして、往々にして彼らの「ヨーロッパ至上主義」が鼻につくこともある。そうした中で、ワールドカップという舞台で他大陸のチームがヨーロッパ勢に(あるいは南米勢に対して)一泡も二泡も吹かせることができたのは、ある意味で痛快な出来事だった。

 カタール大会で、ヨーロッパ以外の大陸からの代表が活躍したことは、“サッカー界の民主化”という面でも大きな意義があったのではないだろうか。

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