サウジアラビア代表がメッシ率いるアルゼンチン代表に勝利!「前半だけでオフサイド7回」堅固な組織的守備【カタール現地ルポ“計25大会出場”ジャーナリストのW杯】の画像
サウジアラビアが金星を挙げるなど、W杯が盛り上がってきた 撮影:中地拓也
  2人合わせて「ワールドカップ25大会」を取材した、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生。2022年カタール大会でも現地取材を敢行している。古きを温め新しきを知る「サッカー賢者」の2人がカタール・ワールドカップをあらゆる角度から語る!

■唯一の地続きの国

“アジアの危機”を救ったのはサウジアラビアだった。サウジアラビア王国はカタールと国境を接している唯一の国(1993年にはわざわざ国境を見に行ったことがあった)。それだけに、スタジアムには大勢のサウジアラビア・サポーターが駆け付けた。いわば、「準ホーム」である。

 サウジアラビア人といえば「ディスターシャ」と呼ばれる、あの真っ白な民族衣装のイメージだろうが、彼らは国外に出るとその衣装を脱ぎ捨てて、ジーンズ姿などに早変わりしてしまう(彼らにとっては、この「カタール国」は自由の国なのである)。

 ルサイル・スタジアムに駆け付けたサポーターたちを見ても“白装束”は少数派だった。

 試合前はアルゼンチン・サポーターの方が優勢だったが、国歌の合唱あたりから形勢が逆転。サポーター的にはサウジアラビア優勢のまま試合が始まった。

 しかし、ピッチ上の戦いは明らかにアルゼンチンの優勢。彼らのボール際の強さ、キープ力は世界一流で、開始早々にアンヘル・ディマリーアのドリブルからチャンスをつかみ、その後も面白いようにパスを回し、奪われてもすぐに素早く切りかえてサウジアラビアに攻撃の糸口を与えなかった。そして、10分にはリオネル・メッシがPKを決めて、「ああ、またもアジア勢惨敗か」と思われたのだが、その後はサウジアラビアの守備が固く、アルゼンチンは攻めあぐねた。

 1対1の戦いで(時には反則も交えて)一歩も引かず、そして組織を保ったサウジアラビア守備陣はライン・コントロールも秀逸でアルゼンチンの攻撃を再三にわたってオフサイドの罠にかけた。前半だけでオフサイドはなんと7回に達した。「VARに助けられた」というより、サウジアラビアの組織的守備をほめるべきだろう。

  1. 1
  2. 2