■イニエスタやペドリなど、中盤の選手に必要な資質とは

 また、この試合では現在20歳のMF藤田譲瑠チマも大きなインパクトを残した。トランジション(切り替え)の場面では、相手のクリアボールを拾ったりカウンターの芽を摘んだりと、失点につながりそうなシーンを未然に防いでいた。さらには味方がボールロストしないよう、常にパスコースを確保していた。坪井さんは藤田のプレーをこう分析する。

「香港戦の藤田選手は素晴らしかったです。彼のようなプレーをするために中盤の選手に求められる能力の1つは“予測”ですね。トランジションにおいて相手のクリアやパスがいつ、どこに飛んでくるかを攻撃の最中に予測しておくことが重要です。そのためにはボール周辺だけではなくて、相手FWや遠くにいる味方選手なども認知しておかなければなりません。

 そして、認知するために藤田選手はよく首を振って周りを見ている印象です。藤田選手と同じ中盤の選手――例えばやアンドレス・イニエスタヴィッセル神戸)、それにペドリ(バルセロナ)やセルヒオ・ブスケッツ(バルセロナ)、少し前の時代であれば現役時代のシャビ・エルナンデス(バルセロナ監督)たちは、常に首を振って、ボールと逆サイドを見ているんです。片側のサイドだけで攻め続けるのではなくて、いつサイドチェンジするか、いつ真ん中から攻撃するのかということについてフィールド全体を見渡し相手のウィークポイントを読み取り、彼らがタクトを振っています。

 そしてボールに関わる際に重要になるのが体の向きです。よくありがちなのが、パスを受けるときにボールに対してへそを向けてしまうこと。そうではなくて、ボールを受ける際には半身のような姿勢を取って逆サイドを見やすくするのが大事です。そういった細かいことを少年時代から徹底的にトレーニングしているから、スペインの選手はボールを動かすのが早くて、認知できるエリアも広いんです」

 スペイン代表モラタのようなFWスキルを見せてくれた町野、そしてシャビやイニエスタにも通ずる予測力を示してくれた藤田。若きサッカー日本代表の可能性は大きく広がっている――。

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