鹿島アントラーズが天皇杯ベスト8をかけて戦ったG大阪戦で完封勝利を飾った。その試合の行方を決定づけたのが後半30分の追加点なのだが、その直後に鹿島の選手が見せた行動が胸を打つものだった。
追加点は、後半21分にもぎ取った先制点から4分後のことだ。右サイドからの攻撃で生んだ1点目に対し、2点目は左サイドからの攻撃がもたらした。DF安西幸輝が左サイドの高い位置で相手と対峙すると、1対1の勝負を仕掛ける。そして、抜き切る前にクロスを上げたのだが、これが、ゴール前で待ち構えていたエヴェラウドにピタリと合う。そして、次の瞬間には、ゴールネットを揺らしていた。
勝負の行方を決定づけた背番号9は、すぐに安西の元へと駆け付けた。そこに、樋口雄太や鈴木優磨、三竿健斗も走り寄った。集まった選手が手荒く祝福したのは、安西の方だった。ゴールを決めたエヴェラウド以上に、左サイドバックをもみくちゃにしたのだ。
特に、鈴木と三竿は安西を力強く抱きかかえ、叫ぶようにして言葉をかけた。続けて2人は、サポーターに向けて咆哮した。それはまるで、背番号2を自慢し称賛するかのような行動だった。
このG大阪戦の3日前、札幌ドームで鹿島の選手はサポーターと一触即発の空気になった。コンサドーレ札幌との試合後に観客席にあいさつに行った時のことだ。客席から飛ばされたヤジに安西は怒り、何かを言おうと足を前に出しかけたが、三竿ら他の選手に止められた。しかも、口を手で押さえられ、反論の言葉を発することを完全に封じられた。後味の悪い空気だけが残った。