日本代表の動向に、ファンは一喜一憂する。サッカーと、ラグビー。どちらの日本代表も、世界で上位をうかがうまでに成長してきた。この希有な「フットボール」の両立を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■やっかみVS上から目線
1985年に行われたメキシコ・ワールドカップ予選では、アジアを東西に分けての予選方式となり、日本は北朝鮮、香港を破って韓国との最終予選まで進出して、一瞬、「ワールドカップ初出場」の夢を見せてくれたのだが、最終予選ではすでにプロ化していた韓国に2戦とも完敗してしまった。
その直後、1987年に始まったラグビーのワールドカップに日本チームが出場したのである。なにしろ、アジアでは本格的にラグビーをやっている国はほとんどない。日本相手に勝負ができる国といったら、韓国か香港くらいしかなかったのだ。
サッカー好きの側からしたら、これはなんとも悔しくて仕方のない事態だった。
だから、ラグビーのワールドカップで日本代表が戦っていても、とても応援するような気持ちにはなれなかったのである。
そして、ラグビーの日本代表はワールドカップではまったく勝てなかった。
1991年の第2回大会でアフリカ代表のジンバブエに52対8で勝ったのが唯一の勝利。2011年大会でカナダと引き分けた以外は、すべての大会で全敗だった。1999年の南アフリカ大会では、ニュージーランド相手に17対145という記録的な大敗を喫したこともある(会場は、2010年のサッカーのワールドカップで日本がカメルーンとの初戦で勝利を記録したブルームフォンテーン)。
そんな時に、サッカー・ファンはやっかみ半分に冷ややかな視線を送っていたのである。
おそらく、ラグビー・ファンはワールドカップに出場すらできないサッカーを“上から目線”で眺めていたのだろう。