日本代表の動向に、ファンは一喜一憂する。サッカーと、ラグビー。どちらの日本代表も、世界で上位をうかがうまでに成長してきた。この希有な「フットボール」の両立を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■国立競技場に立った日本代表
7月9日の土曜日に東京・国立競技場で行われたラグビーのテストマッチ、日本代表対フランス代表の試合を観戦した。暑さの厳しい午後の試合(14時50分開始)だったが、会場には5万7011人のファンが集まって素晴らしい雰囲気を作っていた。
スタンドは赤と白の日本代表のジャージーを着たファンで埋まっており、遠目には美しいピンクに見えた。
サッカーのサポーターは、現在、日本代表が着用しているあの“迷彩柄”だけではなく、10年前、20年前のデザインなどいろいろなヴァージョンのシャツを着用しているが、ラグビー・ファンのみなさんはほとんどが正規の最新版のジャージーを着ていた。そのあたりに、2つの異なるルールのフットボールの文化の差を見て取ることができたような感じがした。
2つの異なる種類のフットボールは、1863年にフットボール・アソシエーション(FA=イングランド・サッカー協会)が創設されて「協会式フットボール」(つまり、サッカー)ができた時に袂を分かち、最初はサッカーとラグビーの違いは「ボールを抱えたまま前に走っていいかどうか」というくらいのささやかな違いだけだったのだが、それぞれがその後それぞれ独自の発展を遂げて、今ではまったく異なる競技になってしまった。