■最初の写真が物語っていることとは?

 最初の写真は、時間とともに距離感が悪くなってしまった、ということだけでなく、ブラジルはいくら日本にやり直されても問題なかった、ということを物語っている。守備が整備されていることに加え、アタッカーにボールが入った時に適切な距離で守備にあたることができれば個で上回られることはない、という自信があった。先の伊東のところだけでなく、今のチームで最も勢いのあるドリブラーの三笘薫が打開を試みても、エデル・ミリトンが肝心なところで体を入れて完璧に封じ込んだ。やり直してようやくボールを入れても、それがゴールではなくそこからスタートだ。

 ではどう戦えばいいのだろうか。

 写真では、エリア手前のスペースがぽっかりと空いたままになっている。遠藤には、横に蹴る以外の選択肢がない。ブラジルが慌てる要素はない。

 縦に入れる、ということを言いたいわけではない。結局はサイドのアタッカーにボールを入れるとしても、それ以外の危険な動きを見せながらでなければこの日の伊東や三笘のように止められてしまう、ということだ。もちろん、彼らがボールを持った時にもそれは欠かせない。

 攻撃で個で上回る、というのは純粋な1vs1ではないはずだ。

対策されていた伊東純也 日本代表vsブラジル代表(20220606)撮影/原壮史

 格上の守備は、攻撃側から選択肢を与えなければ揺らがない。ボールのある場所では純粋な1vs1に見えても、周囲で危険な兆候があれば純粋なパワーバランスでの戦いではなくなる。それこそが、同格以上の相手に対して局面を個で上回るための重要な要素だ。この日は伊東のところでの長友以外、そういう動きが控えめだった。

 試合後、森保一監督は「我々は十分世界でも戦っていける」と手応えを口にすると同時に「勝つにはまだまだクオリティを上げていかないといけない」とも語った。サバイバルと同時に、対強豪国用の動きを備えたハイクオリティなチームへと変わっていかなければならない。

 次のキリンカップが、その絶好のテストの場になる。

 

■試合結果

日本 0―1 ブラジル

■得点

77分 ネイマール(ブラジル)

PHOTO GALLERY 日本代表vsブラジル代表 20220606
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