「サッカー植民地」を広げる欧州の「マキャベリズム」【欧州はなぜ世界のサッカーに責任をもとうとしないのか】(3)の画像
欧州は世界中から才能をかき集めるが、お返しは微々たるものに過ぎない 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 サッカーの世界は膨張を続けている。ヒエラルキーの頂点に立つ者たちは、強欲に世界中から搾取を続ける。その姿勢は正しいものなのか、サッカージャーナリスト・大住良之が問いかける。

■「お返し」をしないヨーロッパ

 FIFAを圧倒的にしのぐ資金源をもち、いまや世界を席巻した観のある欧州のサッカー。しかしその恩恵を受けているのは、一部のビッグクラブ、そしてビッグリーグを中心とした欧州のサッカーだけに限られている。それでいいのかと、私は強く疑問に思う。

 欧州のサッカーの資金源が、世界中からかき集めたテレビ放映権であることはすでに述べた。なかでも、中国や日本、中東各国、東南アジア各国、北米大陸は、UEFAにとって「ドル箱」と言っていい。現在行われている戦争でロシアから欧州へのエネルギー供給が止まったように、もしこうした国々からの放映権収入が途絶えたら、ビッグリーグやビッグクラブはたちまち瓦解するだろう。

 普通の人間であれば、恩恵を受ければ「お返し」をする。だが欧州のサッカーは、その試合を世界中に見せて(もちろんただではない)、お手本になるということ以外では、一切世界のサッカーに「恩返し」などしていないし、しようというそぶりさえ見せない。19世紀に世界中を植民地にして搾取しまくり、欧州だけに富を築いたころに背景となった思想、「マキャベリズム」は健在なのだ!

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