■「失敗」から審判員もファンも学べるはず

 最近、元Jリーグ主審で引退後は日本サッカー協会の審判インストラクターだった小幡真一郎さんが『しくじり審判 失敗から学ぶサッカー審判の教科書』(カンゼン)という本を出した。自分自身のエピソードだけでなく、以前の審判仲間にも広く協力を求め、「失敗例」を集めた非常にユニークな本である。「レフェリー本」は少なくないが、多くは成功談が主体だ。しかし後輩のレフェリーたちや、レフェリングの実際も知りたいと思うファンにとっては、「失敗談」と、そこから学んだ知恵のほうがはるかに役に立つ。

 少し残念なのは、小幡さんの本では、そのエピソードが20年、30年も前のものばかりであることだ。たしかに、終わったばかりの試合で「あの判定は、もっとこうすればよかった」などと発言したら、影響が大きすぎるかもしれない。20年前の話なら、仮にレフェリーの「しくじり」で「犠牲」になった選手やチームでも、笑って済ませられるかもしれない。

 しかし「試合後の審判会見」が実現し、さまざまなことがフランクに、そして正しい形で語られたら、よりふさわしいタイミングで、よりサッカーの理解につながるのではないだろうか。少なくとも、現在のように、監督たちが一方的にレフェリーを非難する一方で、判定が正しければニュースにならず、間違いだったという見解が出れば大げさに書かれるようなことはなくなるはずだ。

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