東京の永井謙佑はゴールを確信していた。74分、永井の放ったシュートはGKチョン・ソンリョンを抜けて無人のゴールに向かっていた。
永井はもちろん、川崎のファンでさえ、同点ゴールだと思ったはずだ。
だが、青い影がそのボールに向かっていた。ファインダー越しにはそう見えた。ジェジエウだった。ジェジエウはゴールライン直前でそのボールを蹴り出した。
全体を見ていた人にとっては、もっと早くからゴールに向かっているジェジエウの姿が視野に入っただろうけれど、私は信じられなかった。
私は部分的に見ていたから、それは忍者のように突然現れたと感じた。
「ゴールを蹴り出した男」はゴールマウスの向こう側でうつ伏せの姿勢で拳を握りしめて力強くピッチを叩いていた
ジェジエウは90分間、献身的なプレーを続けた。何度か苦しくなって、かがみこむシーンもあった。
川崎は連戦が続く中で、レアンドロ・ダミアンが前半終了間際にヘッドで奪った4試合ぶりの「先制ゴール」を守り抜いての6連勝だった。みんなが疲労しているが川崎は止まらない。
川崎が試合終了後にやっている表彰セレモニー「あんたが大賞」はもちろん、ジェシエウだった。