いよいよ9月12日に日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が幕を開ける。初年度は11チームが参加して、ホーム&アウェー方式の総当たりリーグ戦で初代王者を争う。WEリーグの「設立意義」4番目には「なでしこジャパンを再び世界一に」と謳われている。2011年のドイツ・ワールドカップ優勝から10年がたった。いま、日本の女子サッカーに足りないものは何なのだろう。卓越したアイデアを持つ「異能の指導者」片山博義さんに話を聞いた。
■「『ビルドアップ』と『ポゼッション』の違いの共通認識」
片山「もうひとつ、大事なのは、『ビルドアップ』と『ポゼッション』の違いを、チームのなかで明確な共通意識としてもつことです。大住さんは、この違いがわかりますか」
——そう言われてみると、明確ではありませんね。
片山「僕のイメージでは、『ビルドアップ』は『前進』です。自陣から相手陣に、さらにシュートにつながるエリアにはいっていくための手段です。それに対し『ポゼッション』は、ボールを失わないことです。失わないためには、大きく後ろにバックパスをしてもいいわけです」
——よくわかります。
片山「『ビルドアップ』と『ポゼッション』。いまがどういうフェーズなのか、チームで共通意識が必要です。ポゼッションをしようとしているときに、ある選手がいきなり前進してしまい、あわててそれに合わせようとするとボールを失うことになります。試合のなかで、ビルドアップからポゼッションへ、またフィニッシュへと行く瞬間があります。これを、GKを含めて11人が明確に共通意識としてもっていないと、カウンターも受けるし、相手ゴールに対して強い勢いをもってはいっていけないことになります」
——たしかに、明確な区別が必要ですね。
片山「サッカーには、明確な言葉がなければなりません。言葉があるから人間は思考できます。岡田武史さんが素晴らしい本を書き(注:『岡田メソッド』英治出版)、明確な言葉を提唱しています。あれを日本のサッカーの共通用語にしてもいいのではないかと思っています。体は食べたものでつくられます。しかし未来やコミュニケーションは言葉がないとつくることができません。その言葉が日本のサッカーを発展させていくという気がしています」