過酷な放浪生活が続いていると、時には癒しが欲しくなる。そんなある日、サッカー競技場のとなりの体育館を覗いてみると、世界トップレベルのスポーツの試合をやっているではないか。これは絶好の機会に他ならない。さまざまなスポーツを知ることが、サッカー観戦時の理解の幅を広げ、分析に深さを与えてくれることだろう。というわけで、オリンピック期間はせっせと様々なスポーツ観戦に敬意をもっていそしむ次第。ただし、いつもとは違うリラックスした姿勢になるのは致し方のないことかと……。
■嗚呼! 麗しのフローレンス
オリンピックの時に「ついでに」見た競技の中で、面白かったのはシドニー大会(2000年)の時に見た水球の決勝戦でした。ハンガリー対ロシア。水球というスポーツを生で見るのはこれが初めてでしたが、いきなり世界最高峰を見てしまったのです。
パスの正確さが印象的でした。なにしろ、人が泳ぐスピードとボールのスピードではボールの方が圧倒的に速いのです(とくに、水中では止まった状態から急に動くことは不可能です)。ですから、パスが数十センチくらいズレただけでパスを受けることができなくなってしまうのです。
それに比べたら、サッカーのパスなんて大雑把なもの。10メートルや20メートル、パスがズレでも、受け手が一生懸命に走れば、一応パスはつながるのです(もちろん、そんなパスがつながってもチャンスにはなりませんけどね)。
その他に印象的だったのはソウル・オリンピック(1988年)の時に見に行った陸上競技です。この大会の陸上競技は話題豊富でした。まず、男子100メートルでカナダのベン・ジョンソンが9秒79という世界記録を叩き出したのですが、ドーピング違反で記録も金メダルも取り消され、アメリカのカール・ルイスの優勝となりました。また、女子100メートルと200メートルでは、あの美しきフローレンス・ジョイナーが二冠に輝きました。
僕が陸上を見に行ったのは10月1日でしたが、この日はジョイナーの200メートルがあって、そのスタートも間近に見ることができました(ソウルの蚕室主競技場は空席だらけでしたから、種目によって一番見やすい席に移動しながら観戦できました)。