後藤健生の「蹴球放浪記」連載第68回「五輪サッカー」2000年の記憶の巻(2)1500キロの24時間ドライブの画像
シドニーオリンピック準決勝のチケット 提供/後藤健生
アトランタ五輪準々決勝のチケットなど旅の思い出

 いよいよ東京五輪が開幕。男子サッカーは7月22日の初戦、南アフリカ戦で久保建英の鮮やかなゴールで勝利した。
 遡ること20年、2000年のシドニー五輪でアデレードで急遽組織された蹴球放浪隊。今回の任務は、ブリスベンからアデレードまで一昼夜をかけての1500キロのドライブだ。メンバーは2人。ドライバーのM氏とナビにベテラン放浪者が1名だ。人口希薄なオーストラリア大陸のドライブは、行けども行けども次の街には着かず、すれ違うのはカンガルーばかりの過酷な道中となったのだった。

 

※その1はこちら


 さて、2位通過となると準々決勝はグループC1位のアメリカとの対戦になりました。場所は南オーストラリア州の州都アデレードにあるハインドマーシュ・スタジアムです。

 アデレードまでは直線距離で1500キロ近くあります。「早速、飛行機の手配をしなければならないなぁ」と思っていた時、声をかけられました。

「後藤さん、自動車で行きませんか?」と。

 声の主は、当時ライターの仕事をしていたM氏でした(今は、この業界の人ではないので匿名にします)。

 M氏はかつて四国にある強豪校のサッカー部の仕事をしていて、当時はマイクロバスを運転して全国を回っていたとのことで、長距離運転は得意なんだそうです。レンタカーを借りてアデレードまで行くので乗っていけというわけです。

 まる一昼夜のドライブになりますが、答えはもちろん1つしかありません。

「よっしゃ、のった!」

 ブラジル戦の翌9月21日の朝7時頃に待ち合わせて出発です。

 ちなみに僕は運転免許を持っていませんから、運転するのはM氏一人です。他の免許を持っている人にも声をかけたのですが、24時間ドライブに参加しようという人はいなかったみたいです。

 オーストラリアは本当に人口が希薄です。2000年当時のオーストラリア連邦の人口は2000万人ほどで、人口密度は1平方キロ当たり3人(日本の100分の1以下)ですが、その人口の大半は都市に集中しているので内陸にはほとんど人が住んでいません。

 そんな乾燥した大地の上にほとんど直線の道路が伸びているのです。

 行けども行けども、周囲は乾燥していて大きな木も生えない赤くて平坦なサバンナです。なかなか次の街に着かずに真夜中にガス欠寸前といった危機もありました。

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