■コロナ禍で求められるタスク

 2021-22シーズン、アンチェロッティは前回R・マドリードを率いた頃とは違うタスクが要求される。求められるのは、現有戦力をベースとしての戴冠だ。

 R・マドリードは、新型コロナウイルスの影響で財政が圧迫されている。バイエルン・ミュンヘンとの契約が満了を迎えたダビド・アラバをフリートランスファーで獲得した一方で、セルヒオ・ラモスの退団も決まった。年齢やパフォーマンスと高額な年俸を天秤にかけて、長年の功労者との契約を更新しないことを決めたのだ。クラブがバルセロナユベントスとともに、いまだにヨーロッパスーパーリーグの計画から手を引かないのも、世界中が大反対するこの構想がもたらすと信じるギガマネーを希求しているからだ。この状態を鑑みるに、今夏の大型補強は期待できそうもない。

 こうなると、アンチェロッティに必要なのは、チームを活性化する鍵となる「第2のディマリア」を見つける作業だ。マルコ・アセンシオをはじめ、ポテンシャルを引き出しきれていない選手が、現在のチームにはいる。また、度重なる負傷に苦しめられてきたエデン・アザールや、レンタルから復帰するガレス・ベイル、マルティン・ウーデゴール、ルカ・ヨヴィッチら、高コストとなりかねない選手たちの起用法と去就を定める必要がある。

 ただし、前回の監督就任時とは違うアドバンテージもある。今回、アンチェロッティはジネディーヌ・ジダン前監督からバトンを受け取った。ジョゼ・モウリーニョの後を受けた頃のような、ロッカールームの険悪な空気は存在しないのだ。

 過去、監督としてチャンピオンズリーグ(旧チャンピオンズカップ)で3度優勝を達成した経験があるのは、アンチェロッティ、ジダン、ボブ・ペイズリーの3名だけだ。実績、キャリア、人柄...。どれを取っても申し分ない。アンチェロッティのR・マドリードが、再びスペインと欧州の舞台で躍動するかもしれない。

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