アンチェロッティのレアル・マドリード再生法(2)求められる「第2のディマリア」の画像
アンチェロッティの下、レアルはスペインと欧州での復権なるか 写真:渡辺航滋

 2020-21シーズンが終了して、レアル・マドリードではジネディーヌ・ジダン監督が退任した。リーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグと主要タイトルを獲得できず、次のシーズンに向けての監督交代が決断された。

 後任に選ばれたのは、カルロ・アンチェロッティだった。アンチェロッティ自身にとっては、R・マドリードでの再登板となる。

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■可変システムを生んだ鍵

 前回のR・マドリード監督就任の際、アンチェロッティはクラブの絶対的な権力者であるフロレンティーノ・ペレス会長の要求に従った。獲得に計2億3400万ユーロ(約315億円)を投じたカリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドによる3トップ、「BBC」の常時出場を約束したのだ。

 豪華絢爛の3トップは魅力である一方、チーム全体のバランスを取ることは簡単ではなかった。そのための鍵があった。アンヘル・ディマリアの配置転換である。

 アンチェロッティ監督は、本来ウィングだったディマリアのインサイドハーフ起用を決めた。【4ー3ー3】のインサイドハーフにディマリアを置くことで、守備時には、下がってきたウィングの一枚とディマリアが両サイドハーフになり、【4ー4ー2】が形成された。現在では主流になっている「可変システム」を、アンチェロッティ・マドリーは使いこなせるようになった。

 ディマリアはベンフィカで左利きのドリブラーとして評価を高め、R・マドリードというビッグクラブにたどり着いた選手だ。

 だが、アンチェロッティ監督は彼に異なる素質があると見抜いた。高い戦術理解度、アップダウンを厭わないスタミナ、周囲とコンビネーションできる連携力、そういった能力は中盤でこそ生きるとイタリア人指揮官は考えたのだ。

 とりわけアンチェロッティ監督にとって、ディマリアの体力は魅力的だった。「BBC」を中心にしたフットボールでは、鋭利なカウンターを武器に勝利を目指していたが、そのスタイルでは攻撃と守備が分断されるという現象が度々起きていた。

 その「つなぎ役」として、ディマリアという選手は適任だったのだ。

 選手たちを快適にプレーさせて、なおかつ戦術的な綻びを生じさせない。まさに「ソフトタッチ」ながらもチームを激変させる、アンチェロッティの真骨頂が発揮された。

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