■要求を理解する力
アンチェロッティという監督は、自分が何を求められているかをよく理解している。
R・マドリードでは、フロレンティーノ・ペレス会長と良好な関係を築くことが肝要だ。当時のクラブには、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの「BBC」が必要不可欠な存在だった。移籍金総額2億3400万ユーロ(約315億円)の3トップを起用しての勝利を、ペレス会長は望んでいた。
アンチェロッティはコンディション不良の場合を除き「BBC」のスタメン起用を確約した。だが、果たす仕事はそれだけにとどまらなかった。
アンチェロッティ監督のR・マドリードでのファーストシーズン、2013-14シーズンにおいては、サミ・ケディラの負傷離脱があり、指揮官は中盤の構成に頭を悩ませていた。
まず、アンチェロッティ監督はイスコをトップ下に据え、シャビ・アロンソとルカ・モドリッチをダブルボランチに配置する【4ー2ー3ー1】を試した。しかし、この選手起用と布陣では中盤が間延びしてしまい、連動したプレッシングと効果的なカウンターを仕掛けられなかった。
だが、アンチェロッティはチームを機能させる発見をした。ある選手の配置転換が、タレントたちを有機的に動かし始めたのだ。