■「マナス国際空港」

 しかし、タシケントまでは飛行機で移動することにしていました。なにしろ、ビシュケクからタシケントまでは直線距離で500キロ弱もありますし、天山山脈の険しい山々を越えなければならないのです(あるいは、再びカザフスタンに入って、平原地帯をグルッと迂回するか……)。

 61便は1974年に完成した「マナス国際空港」から出発します。旧フルンゼ空港まではホテルから歩いても行ける距離だったんですが、マナス空港は市内から北に20キロ近い距離があります。空港までは旧フルンゼ空港前からマルシェルートカ(ミニバス)が出ていました。61便は朝の9時31分発なので、早朝にそのミニバスに乗ってマナス空港に向かいました。

「マナス」というのは、この国の歴史叙事詩に出てくる英雄の名前です。天翔ける馬を駆って中央アジアの平原や山々を疾駆した人物だといいます。日本で言えば、たとえば「ヤマトタケル」のようなものなのでしょうか。新しく独立国となったばかりのキルギス共和国政府は国民統合の象徴として「マナス」の説話を利用しようとしているのです。神話や説話は、どこの国でもそうやって国家に利用されるのです。

 僕は、なんとなく旧フルンゼ空港のようなこじんまりしたターミナルビルを想像していました。

 なにしろ、ビシュケクの空港からはそれほど多くの便が飛んでいないからです。小さな国ですから国内線の路線はほとんどありませんし、国際線の便数もそれほど多くはありません。1997年当時、ロシアの首都モスクワまでは週4便。そして、タシケントまでは週2便だけでした(だから、キルギスの人たちは国外旅行の時には隣国カザフスタン・アルマトイの空港までバスや自動車で移動するのです)。

 ところが、ミニバスの車窓から見えてきたのは想像していたよりはるかに大きなターミナルビルでした。

第2回につづく
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