本誌を創刊したときのエピソードだ。一部に、なぜ「サッカー批評」なのか、なぜ「フットボール批評」じゃないのか、という意見があった。このスポーツの本名は「フットボール」なんじゃないの、世界では「フットボール」をプレーしているんじゃないか、と。しかし、日本ではこのスポーツは「サッカー」なんだと一蹴された。見識である。きわめて正しい。サッカーは、このスポーツの日本語での正式名称なのである。
■フットボールって何だ?
ことし4月、「公益財団法人日本サッカー協会(JFA)」の事務局で大きな組織改編があり、人事異動もあった。その「組織図」を見て、思わず「えっ!」と独り言を言ってしまった。「強化育成部」「指導普及部」「審判部」「競技運営部」そして「チームコミュニケーション部」の5つが、『フットボール本部』という名でまとめられていたのだ。
そういえば、Jリーグにも数年前から『フットボール本部』があり、競技運営や強化・育成の仕事をまとめている。
それはともかく、JFAは「サッカー」のための組織ではなかったのか。すべの仕事は、「サッカー」に関連するもののはずである。わざわざ『フットボール本部』と銘打たなければならない理由が、どんなところにあるのだろう? 「サッカー」と「フットボール」は違うのか? それとも、傘下の47都道府県や9地域でやっている競技は「サッカー」だが、日本代表や国際試合、天皇杯などの全国大会だけは「フットボール」という特別な競技なのだろうか――。
まあ、あまり固いことは言わないことにしよう。近年は、「サッカー」という言葉を使わず、「フットボール」と書く記事や、コメンテーターも少なくない。私も、学生時代に数人の友人でつくっていた同人誌に『Modern Football』という誌名をつけた記憶がある。大学でドイツ語を習い始めたばかりの友人に「モデルンって何だ?」と聞かれたのには閉口したが、私も仲間たちも「Football」にはあまり違和感をもたなかった。気取っていたのである。