かつて三浦知良が、日本にいるときは小柄だったのに、ブラジルに渡って食事が変わったら、みるみる体が大きくなったと語っていた。スポーツ選手にとって肉を食らうことはそれほど大切なことであるようだ。世界を旅するサッカー・ジャーナリストもまたしかり。1978年アルゼンチンW杯から2004年のチェコ旅行まで、サッカー旅は無垢な日本人青年をこれだけ鍛え上げた――。
■豚の膝との60分一本勝負
さて、ワールドカップが終わってから、僕はバスにのってパラグアイの首都アスンシオンを見物。さらにイグアスの滝を見てからブラジルに入り、サンパウロのモルンビーでサンパウル対グレミオ、リオデジャネイロのマラカナンでフラメンゴ対パルメイラスの試合を見てから帰国しました。
イグアスからサンパウロまで夜行バスに乗った時のことです。早朝にバスは休憩しました。各自、朝食です。僕は簡単なサンドイッチか何かを注文しました。すると、同じバスに乗っていたオバサンが、1キロ近い量のある巨大なステーキを注文したではありませんか!
非肉食民族の純情な日本人青年はびっくりして見ていました。「オバサンが、朝っぱらからあんな量の肉を食べるのか?」と。しかも、休憩時間はそれほど長くありません。
見ていると、オバサンは大量の肉をアッという間に食べ終わって、コーヒーを飲んで、涼しい顔をしてバスに戻って行ったのです。
この時の南米旅行が僕にとっての本格的肉食との遭遇でした。
それから、僕もあちこちで肉を食べながら成長しました。その成果を発揮したのが2004年にジーコ監督の日本代表がチェコに遠征した時でした。久保竜彦の一発で、日本がチェコを破った試合です。