その国のサッカーを育むものは何か——。そこに素敵なスタジアムの存在が大きな役割を果たすことに、議論の余地はない。ファンやサポーターはスタジムとともに育ち、歌と声援によって選手やチームを強化し、クラブを発展させる。それはリーグ全体の発展に寄与することとなり、ひいてはサッカー国力の向上にもおおいに貢献するのである。良いスタジアムの効用はかくも大きい。今回は、日本サッカーの強化の一翼を担うサッカー専用スタジアムについて——。
■スタジアムのもつ大きな力
以前、私は、日本サッカー協会やJリーグに「タッチラインの長さを103メートルにして、ゴールライン外の人工芝をなくすべきだ」と何回も提言した。ゴールラインを短くすると、ペナルティーエリアとタッチラインで囲まれた地域が狭くなり、プレーに小さからぬ影響がある。しかしフィールドの縦を2メートル短くしても誰も気づかないだろう。
だがそうすれば永遠に芝面は106メートルのままだと、日本サッカー協会もJリーグも折れない。とても難しい問題である。
ワールドカップの決勝戦で陸上競技場が使われたのは、過去21大会のうち8大会。1990年イタリア大会以後5大会は、アメリカン・フットボールのスタジアムを使った1994年大会以外、すべて陸上競技型のスタジアムだった。しかし2006年ドイツ大会の決勝戦がベルリンのオリンピック・スタジアム(青いトラックをもった陸上競技場)で行われた以後、決勝戦はすべてサッカー専用競技場での開催となっている。
1974年に西ドイツで開催されたワールドカップでは9スタジアムが使われたが、サッカー専用はドルトムントひとつだけで、他はすべて陸上競技型だった。イングランドと異なり、西ドイツではスタジアムは州や都市が所有していたからだ。だが32年後、「統一ドイツ」となって迎えた2006年大会では、12スタジアム中、陸上競技型は3つだけだった。新しい時代のドイツのサッカーのためにサッカー専用の新スタジアムが必要と考えられたからだ。この大会後から、新スタジアムを舞台に、ブンデスリーガは飛躍的な発展を遂げることになる。
21世紀のサッカーは「スタジアムの時代」である。ファン・サポーターが快適に観戦できるだけでなく、迫力あるプレーを存分に楽しめるよう、専用スタジアムの新設こそ、ファンを増やす最も大きな力になる。