■レアルをサポートした形に

 しかし、アトレティコの勢いが失われたからといって、バルセロナが攻勢に出ることができたわけでもなかった。試合は停滞感を増し、バルセロナの最も効果的な攻撃は放り込みへと変化していった。

 終盤になっても互いにリスクをとらず、試合はそのまま0-0で終了。レアルだけが幸せな結末になった。

 ハーフタイムにアラウホを投入したことが両チームを合わせてこの試合最大のポイントとなったが、そもそもバルセロナが採用している3-5-2は、彼の離脱とミンゲサの不安定さが重なり4バックで高いラインをとるやり方が困難になったことが大きな要因だった。

 アラウホが投入されたことで安定感が戻ってきたこの日の最終ラインだったが、4-3-3に回帰できる準備は整っている。ファーストチョイスではないものに慣れてきたことで、本来のやり方よりも優先順位が上になってしまっているバルセロナ。トップチームからカンテラまで全チームが同じシステムで戦うことで伝統として受け継がれ、クラブの代名詞にしてきた戦い方をあえて取り戻さずに生まれ変わるつもりなのだろうか。それとも、伝統やアイデンティティというものを気にすることができないほどギリギリの戦いを続けているということなのだろうか。

 今シーズン起きた様々な騒動を振り返ると、少なくともクラブ上層部はそれらのことを考えていない。クレの声も届かなくなってしまっている今、伝統を守るのであれば現場が最後の砦だが、果たしてこのままシーズンを終えることになってしまうのだろうか。

 ブラウグラナ1チームの問題ではない。レアルの優勝を誰よりも望まないはずのバルセロナとアトレティコがレアルの優勝をアシストする形になったリーガは、これまでと違う雰囲気を醸し出している。それぞれのアイデンティティが激突し合う情熱のラ・リーガは戻ってくるのだろうか。
 

■試合結果

バルセロナ 0―0 アトレティコ・マドリード
 

  1. 1
  2. 2
  3. 3