■いつの日にか、ハンド解禁も

 1863年にイングランドでザ・フットボール・アソシエーエョン(FA=協会)が設立されて、初めてフットボールの統一ルールが作られたのだが、その時はハンドは反則ではなかった。ただ、ボールを抱えて走ったり、ボールを投げてはいけないということが決められただけだった(そして「ボールを持って走ることを認めよ」と主張するグループは協会に加盟せず、後にラグビー・フットボール・ユニオンを結成した)。

 アソシエーション側は1870年までには手でボールを扱うことを全面的に禁止した。

 手でボールを持つことができないことが、サッカーの面白さを生み出す。つまり、サッカーでは「ボールを持っている」と言っても、実際にはボールを自分の体のすぐそばに置いていつでも触れる状態にあるだけなのだ。だから、相手の選手がプレッシングをかければ、相手ゴール前でも中盤でもいつでもボールを奪うことができる。だから、あちこちでターンオーバーが生まれる。

 もし、攻撃側の選手がボールを持ったり抱えたりできたら、相手からボールを奪うことは不可能に近くなるから、守備側はプレッシングなどかけずに自陣ゴール前を固めて守るしかなくなる。ハンドボールの試合では守備側はそのようにして守っている。つまり、ボールを手で持てないから、サッカーではグラウンド全面でターンオーバーが起こり、中盤での攻防が繰り広げられるのだ。

 だから、ハンド解禁といっても、持ったり、抱えたりは禁止である。手でボールを叩いたり弾いたりすることを認めるのだ。そうしたプレーを認めても、サッカーというゲームは大きくは変わらないだろう。長距離のパスをするには、手ではなく足を使うしかない。

 ただし、手でボールを弾いたり、叩いたりすることができればヘディングは必要なくなる。手を使えるからようになるから、ゴール前でGKのピーター・シルトンと競り合う場面では、「神」でなくても勝てるようになる。バレーボールのスパイクのようなシュートが飛び、得点数は増えることだろう。最近、ヘディングが脳に障害を与えるのではないかと取り沙汰されているが、ハンドを解禁すればヘディングは不必要となり、サッカーはより安全なものになる。

 遠い将来の話として、ハンド解禁はマジで検討に値するように思うのだが……。

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