■プレーを「ギリギリ」で変えられるために
このチームには4-2-3-1のシステムに適性のある選手、3-4-2-1で持ち味が引き立つ選手、どちらのシステムにも順応する選手がいる。いずれかに軸足を置くとしても、3バックと4バックを併用するとしても、久保は重要な役割を担うはずだ。
この試合では被ファウルが5回を数え、そのうちひとつはペナルティエリアすぐ外の位置だった。久保は自ら直接FKのキッカーを務め、クロスともシュートとも言える鋭いボールが相手GKを襲った。アタッキングサードでファウルを誘い、自らゴールを狙うことも、久保のストロングポイントである。
同時に、三笘が持つ「相手を剥がす力」も見逃せない。さらに言えば、久保と三笘の化学反応をチームの強みにできるのかも、東京五輪で成否を分けるポイントとなる。
2人の化学反応について、今回のアルゼンチン戦にヒントがあった。
16分のシーンである。左サイドで高い位置を取った旗手怜央へ、ボランチの中山雄太からパスが入った。三笘は旗手の右斜め後方にいて、久保はほんの少し遅れて三笘の正面に入ってきた。旗手から久保へパスが入ると、アルゼンチンの右サイドバックとボランチふたりが食いつく。そのうちひとりのアプローチが遅れたのは、三笘を気にしていたからだ。
久保はトリプルチームに対応されるが、ペナルティエリア内で前を向いている。守備側は不用意に飛び込めない。ペナルティエリア内へ侵入した旗手へ、久保からラストパスが渡った。
旗手がゴール前へ通したパスは、得点へ結びつかなかった。しかし、三笘と久保が同サイドで入り、そこへ旗手が絡むことで、決定的なシーンが生まれたのだった。
昨シーズン在籍したマジョルカでも、久保は同じような連携を構築していた。右ウイングのポジションで前線(あるいは中盤)の選手と近い距離感でプレーしているところへ、右サイドバックのアレハンドロ・ポソがかかわってくるというものだ。フリーランニングを厭わないポソの存在が、久保のプレーの選択肢を増やした。
久保×三笘の化学反応は興味深いが、トライアングルのほうがプレーの選択肢は増える。そして、チョイスを多く持つことで守備側は難しい対応を迫られ、攻撃側は優位に立つことができる。プレーをギリギリで変えることができるようになるのだ。
ドリブルで仕掛けてフィニッシュへ持ち込むことができるだろうし、相手のファウルを誘うこともできるだろう。そう考えると、久保と三笘に旗手が絡んでいった16分のようなシーンを増やしていきたい。
五輪の登録メンバーは、フィールドプレーヤーが16人に限られる。複数ポジションをこなせる旗手は貴重な人材だ。川崎Fで三笘と同サイドプレーし、連携を深めているのも頼もしい。
久保×三笘+旗手のトライアングルを、もう一度試してみる価値はある。