■テクニシャン2人の頭上をボールが……
とにかく、中盤での激しいボールの奪い合い、球際の戦いが延々と続く試合だった。
シュート数よりファウル数の方がはるかに多く(反則はヘタフェが20、アラベスが19)、反則で笛が吹かれたり、あるいはボールがタッチに蹴り出されたりしてプレーが止まる回数が多い試合だった。攻撃的な選手にとっては、とくにボールを触る回数を増やして特徴を発揮したい久保やアレニャにとっては、フラストレーションばかりが溜まったことだろう。
ボールを奪ってからも、ヘタフェはトップのハイメ・マタあるいは中盤から豊富な運動量で飛び出していくマウロ・アランバリにボールを入れるか、ウィングバックのダミアン・スアレス、マルク・ククレジャがアーリークロスを放り込むだけ。一方、アラベスの方も奪ったらツートップのデイヴェウソンかホセルに当ててシンプルな勝負を挑み続けた。
要するに、久保やアレニャにボールが渡ってくる回数は極端に少ないのだ。
しかも、ボールを持つことができてもサポートの動きがないから孤立して勝負せざるを得ず、ドリブルを仕掛けてはつぶされることの繰り返しだった。テクニックを披露する場面はともに2、3回しかなかったのではないだろうか。
もちろん、久保も、アレニャも、確かにボール・テクニックという意味では両チーム22人の選手のなかで抜きん出たレベルにあることは誰にでも分かる。だが、そのテクニックは、この試合ではチームのためにほとんど生かされていなかった。
常套句ではあるが、まさに「ボールが頭上を行き交う試合」だったわけで、交代でベンチに座った瞬間に「えらいところに……」という意識を持っても当然だろう。