9月19日に行われたアウェイでのモンテディオ山形戦でも、FWディサロ・燦・シルヴァーノのゴールで先制し、後半に追加点を加えて勝利し、首位の座を堅持したギラヴァンツ北九州。
2020年シーズンのJ2リーグを席巻するギラヴァンツ北九州は、圧倒的な走力とプレーの強度を両立させている。前線からのプレスを連続して仕掛け、相手ゴールに何度も迫っていく。2シーズン前はJ3で最下位に終わったチームは、わずか2年でJ1昇格を射程圏内にとらえるまでになった。
昇格請負人と呼ばれる小林伸二監督が19年にやってきたことで、チームがドラスティックに変わったのは間違いない。そのうえで言えば、指揮官とともにスタッフ入りした村岡誠フィジカルコーチの存在も大きいだろう。
走れるチームを作り上げたキーマンに話を聞いた。
──北九州の走力と強度がどのように作られてきたのか、そのプロセスをぜひお伺いしたいと思っています。
「走れているように見てもらえるのは素晴らしいことですが、単純にフィジカルがあって走れているだけではなく、選手同士の距離感、走るタイミング、どういうところに走るのかが、きちんと整理されているということも言えます。そうしたことがあって、いまのサッカーが表現されていると思います」
──フィジカルコーチに就任した19年当初、選手たちのフィジカルのレベルはどのようなものでしたか?
「私は2008年から11年まで、モンテディオ山形で小林監督と一緒に仕事をさせていただきました。その後はしばらくサッカーから離れていたのですが、選手個々のフィジカルの能力は当時とあまり変わっていないのかなというところで見ていくと、率直に低いレベルでした」
──そこからどうやって引き上げていったのでしょうか。
「低いからといってやり込み過ぎから壊れてしまうので、段階的に負荷を上げていきました。私たちにとって好都合だったのは、J3は週に一度しかゲームがないのです。連戦がないので午前、午後の2部練習をやってということで、コマ数も時間もしっかり確保できる状態がほぼ1年間続きました。それによって土台を作ることができました」
──テクノロジーも駆使してきたと聞きます。
「私がサッカーから離れている間に、便利なものが出ていまして(笑)。GPSを使っています」
──具体的にGPSでどんな数値を集めるのでしょう?
「私たちが使っているものでは走行距離と強度、それと心拍数が同時に把握できます。心拍数が設定されたターゲットに達しているかどうか、回復具合はどうか、などが読み取れます。山形を離れてからはAFC(アジアサッカー連盟)のフィットネスのライセンスを取りにいったり、フットサル日本代表のフィジカルコーチをやったりしたなかで、強度の高いトレーニングをどれぐらいきちんとできるのかが、実際のゲームのなかで発揮できる強度に比例してくるとつかんでいました。GPSを使うことで、狙った強度のトレーニングができているのは間違いないと思います」