特筆すべきはセルヒオ・ラモスの「リベロ化」だ。名実ともにマドリーのカピタンとして風格を漂わせ始めているS・ラモスが、マドリーのボール保持時に相手ゴール前まで駆け上がってくる。サイドに流れるベンゼマに「横」にズラされ、クロースやS・ラモスの飛び出して「タテ」にズラされる。二重の揺さぶりに、リーガの90%以上のチームは対応できなかった。今季、S・ラモスがリーガで11得点を挙げてベンゼマ(21得点)に次ぐゴールスコアラーになったのは偶然ではない。
■リピートは通用しない
シティはファーストレグで、ロングボールを多用した。ジョゼップ・グアルディオラ監督はジダン・マドリーの「前線からのプレス」と「ショートカウンター」を警戒し、GKエデルセン・モラ―レスからのフィードでマドリーのプレッシングを無効化した。この策が嵌り、戦術面で優位に立ったシティが最終的に勝利を収めた。
逆に、ジダン監督は面を喰らっただろう。後方から丁寧にボールを繋いでくるペップ・シティを想定していたからだ。そのビルドアップを封じて、敵陣に押し込むというのがジダン監督が描いていた画だった。
だがセカンドレグにおいて、マドリーは前線からのプレスとショートカウンターに頼るチームではなくなっている。クロース+2CBの3枚ビルドアップ、フェルラン・メンディの偽サイドバック、二列目の飛び出し、S・ラモスのリベロ化と攻撃の戦術は多彩になっている。S・ラモスが出場停止で不在だが、機能するメカニズムは残存しており、グアルディオラ監督としては手を焼くだろう。
コロナの影響で試合が延期になっていなければ、マドリーにとっては苦しい展開が予想された。Tiene flor(ティエネ・フロール)とは、「幸運な男」とジダン監督を揶揄する際に使われる言葉だが、しかし運を持たずにタイトルを逸するより運を持ちタイトルを獲得する方を誰もが望むに違いない。幸運な男はペップ・シティを倒せるのかーー。ジダンの不敵な笑みが脳裏にちらついている。