■ナイジェリアで、日本人の誇りを守る
ホテルでの毎日の食事は、ジョロフライスというピラフもありましたが、たいていキャッサバの粉を練った主食に肉か野菜のソースを付けて食べていました。別にそれがマズかったわけではないのですが、毎日同じようなものばかりだったのでちょっと飽きてしまいました。
そこで、ホテルの前でいつも客待ちをしているタクシーの運転手に「どこか、地元のレストランに連れてってくれないか」と頼んだわけです。地元の美味しいものは、タクシーの運転手に聞く……。これは、世界のどこに行っても通用する常識です。
で、連れて行かれたのが「フォスマン・コンティネンタル・レストラン」というところでした。
メニューを見ると「Cow Leg Pepper Soup」というのが目につきました。U20日本代表の監督だったフィリップ・トルシエが、記者会見の時に地元の記者に「ナイジェリアで監督をしていた当時の思い出は?」と聞かれて「ペッパースープをまた食べたい」と答えていたのを思い出したからです。それに、「Cow Leg」という単語にもなんとなく惹かれました。
「牛の脚」とは「牛すじ」でっしゃろか?
さて、ペッパーをはじめとして様々な香辛料で真っ赤になったスープが運ばれてきました。
スプーンですくって一口目。ワォッ! これはビックリ。本当に見た目通りに、いやそれ以上に辛かった! かつて経験したことのない辛さです。
給仕係の女性だけでなく、コックまで厨房から顔を出して、ニヤニヤしながらこちらを見ています。「あの外人さんたち、あんな辛いもの食えんに決まっとんぞ」とでも思っているに違いありません。こうなったら、日本人の誇りを守るためにも食べきってみせなければいけません。僕は、突然愛国心に目覚めました。
そして、一所懸命に食べていると、たしかにとんでもなく辛いことは辛いんですが、牛肉の味もしっかりしていて、たしかに美味しいものだということが分かってきました。もちろん、それでも、とにかく辛いんですがね。
一緒に行った同業者の田村修一氏は辛い物が苦手だったらしく、一口目を食べたとたんに滝のように汗を吹き出して「後藤さん、よかったらこっちも食べてください」と勧めてくれたんですが、さすがに2人前を食べるのは遠慮しました。