■ゴールに必要な条件とは……

 こうして、チーム内で絶対の存在となり、多くのチャンスの起点になっている久保建英だが、残念なことにラ・リーガ再開後にはまだゴールが生まれていない。

 これは、やはりマジョルカという攻撃力の乏しいチームにいる悲哀であろう。

 攻撃の場面で絡んでくる味方が少なすぎるのだ。右サイドハーフでプレーすることの多い久保だが、サイドバックのアレハンドロ・ポソとの関係は良好だ。ポソから久保へ良いボールが何度も供給されるし、追い越していくポソを久保が使う場面も多い。

 だが、それはあくまでも2人だけの関係でしかないのだ。

 第33節でセルタと対戦して5対1で勝った試合では、相手が下位チームだったのでマジョルカも攻撃に人数を割くことができた。その結果、久保がタメを作って起点となることで、何人もの選手が顔を出すことができるようになった。結果として分厚い攻めができたことが今季最多得点という5ゴールを生み出した。

 たとえば、久保のアシストによって、ポソのリーガ初ゴールが生まれた3点目の場面。久保が中に入れたパスに対して、イドリス・ババとポソの2人が絡んだからこそ生まれた得点だった。

 マジョルカでは、久保が単独でチャンスを作る場面がほとんどだ。

 久保がボールを受ける瞬間は、ほとんどの場面で周囲からまったく孤立した情況になっている。久保はボールを受けて相手と対峙しながら、ボールを動かしてスペースを作ってドリブル突破したり、味方にキラーパスを通したり、あるいは自らシュートを狙うしかないのだ。

 味方がスペースを作って、久保がそのスペースを利用して走り込むとか、味方とのワンツーを使ってスペースに抜けるといったプレーがほとんどできないのだ。周囲の選手たちは、久保にボールを預けると、久保が「個の力」で形を作った後にパスを受けよう考えて久保に任せきりになってしまう。

 もう少し、攻めに厚みのあるチームであれば、久保がチャンスを作る場面もあれば、味方の作ったチャンスに久保が飛び込んでいく場面もできるはずだ。ボックス内の決定的な位置に走り込んだ時にあの絶妙のファーストタッチで相手をかわすことができれば、得点は容易に生まれるはずだ。

 南野拓実は、リヴァプールという世界最強のチームに移籍したため、なかなか出場機会を与えられないでいる(1年目、それも冬の移籍というのでは、あのクラスのチームでレギュラーの座をつかむことが簡単なわけはない)。一方の久保は、今やチームの中心にまでなっているが、こちらは弱小クラブに移籍したことによる悲哀を味わっているわけである。

 しかし、来シーズン、久保はチャンピオンズリーグあるいはヨーロッパリーグに出場する程度の強豪チームでプレーすることになるだろう。そうなれば、あるいはもしもレアル・マドリードへの復帰がなれば、分厚い攻撃の中で久保の才能がさらに開花していくことだろう。

 まだ、19歳になったばかりの久保建英。さらにさらに上を目指してもらいたい。

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