バイエルン・ミュンヘンがブンデスリーガ8連覇を達成した。6月16日に行われた32節、アウェーでのブレーメン戦に1ー0で勝利。この時点で3試合を残す2位ドルトムントとの勝点差を10とし、8シーズン連続30回目の優勝を決めた。8連覇も30回の優勝も、どちらも前人未到のブンデスリーガ最多記録だ。
ブンデスリーガにDFBカップ、そしてチャンピオンズリーグの3冠を制した2012ー13シーズンからドイツの覇権を握り続ける絶対王者の強さの秘密は、どこにあるのだろう。
今シーズンを振り返れば、決して順風満帆ではなかった。2年目のニコ・コバチ監督がチームを掌握しきれず、序盤からもたついた。7節ホッフェンハイム戦に1ー2で敗れてシーズン初黒星を喫し、続く8節アウクスブルク戦は2ー2の引き分け。それぞれ12位、14位という下位勢に不覚を取って首位から陥落すると、コバチの求心力はいよいよ低下し、迎えた10節フランクフルト戦で1ー5の大敗。これでコバチの首が飛んだ。
しかし、監督交代によって状況は好転する。アシスタントコーチから昇格したハンス=ディーター・フリック暫定監督のもとでチームは落ち着きを取り戻し、レバークーゼンに1ー2、ボルシアMGにも同じく1ー2のスコアで敗れた13〜14節の2連敗を物ともせずに、その後は連勝街道に。15〜20節の6連勝で首位の座を奪い返すと、引き分けを挟んで22節からコロナ禍による中断に入るまで4連勝、再開後も7連勝と圧倒的な強さでマイスターシャーレ(シャーレ=皿の形の優勝トロフィー)を掴んでみせた。
監督の途中交代という不測の事態を乗り越えて優勝したのは、今シーズンだけではない。17ー18シーズンにも、同じように選手の信頼を失ったカルロ・アンチェロッティ監督(現エバートン監督)を序盤の9月に解任しながら、暫定監督のもとで巻き返しに成功している。この時は、12ー13シーズンの歴史的な3冠を置き土産に監督業から退いていたユップ・ハインケスを口説き落としてリリーフに立て、覇権を守ったのだった。
こうして必要な時に必要な修正を施し、チームを立て直すことができるのは、フロントがしっかり機能しているからだ。選手として1970年代の黄金期に寄与したレジェンドでもあるウリ・へーネス会長(今年3月に退任)、カール=ハインツ・ルムメニゲCEOを頂点に指揮系統が明確で、盤石の組織力を誇る。
バイエルンの1強体制は、経済的な成功の賜物でもある。国際的な会計事務所のデロイトが調査・発表している「フットボール・マネーリーグ」によれば、18ー19シーズンのバイエルンの総売上高は6億6010万ユーロ(約792億1200万円)で世界4位、ブンデスリーガ勢では断然トップだ。2位のドルトムントは3億7710万ユーロ(約452億5200万円)で、その差が倍近くある。ピッチでの勝利によってクラブのブランド価値を高め、それを収益化する錬金術にも長けているのだ。